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 焼き杉羽目板

 当事務所では、竹小舞土壁の外側に張る羽目板として焼き杉板を用いることが増え、外壁仕上げの定番になろうとしています。これまで様々な樹種と納まりの羽目板を用いてきました。青森ヒバ40㎜厚の雇い実加工板張り、サワラ38㎜厚の雇い実加工板張り、サワラ15㎜厚の本実加工板張り、ヒノキ15㎜厚の目板張り、スギ15㎜厚ササラコ下見板張りを現場に応じて選択してきました。表面の塗装は無塗装とする場合と、柿渋、柿渋とベンガラと荏油を混ぜた塗料、自然風外部塗料などを建て主に自ら塗ってもらう場合とがあります。




写真① 全面焼き杉板張りの「里山の家」
  
 20年間、色々な方法を試してみましたが、外部羽目板を寿命30年~50年の交換部品と考える時、無塗装にして板の自然な風化を楽しむか、3~5年毎に塗装を繰り返して初期の状態を維持する努力をずっと続けるかのどちらかになると考えます。黒色に近い塗量以外は、紫外線により2~3年で塗装の効果がなくなることはメーカーの説明書にも明記されていますが、雨の強く当たる部分と軒に近くて雨のほとんど当たらない部分では、劣化の程度にかなり差が生ずることは避けられません。羽目板の厚みが15㎜程度あれば、青森ヒバ・サワラ・ヒノキ・スギなどの樹種の場合、特別の手入れをしなくても30年程度はもつでしょう。戦後すぐに建てられた住宅の外壁材として、通称2分半(7.5㎜)のスギの押し縁羽目板が朽ち果てずにまだ残っていることを見る限り、無垢の板は丈夫なものだと感心するばかりです。

 さて、焼き杉板を羽目板に用いることを始めたのは1999年からで、一部軒のない下野の外壁に張りました。西日本を旅行したり、愛媛県での仕事に通っている時、関東では見かけない真っ黒に焼かれた羽目板をたびたび見てきました。地元の大工衆に聞けば、家が長持ちするので昔からやっている方法と言います。近くによって見れば、ぼろぼろになるほどしっかりと表面を炭化させたものもあり、墨になった表面に光沢があって美しいと感じたものです。年間降雨量が1200~1300㎜程度で元々雨の少ない瀬戸内地方と、1500~1600㎜の関東地方では気象条件に差があり、炭化させた表面が雨で簡単に剥がれて流れ落ちてしまう心配はありましたが、建て主の同意が得られ試してみることにしました。




写真② 「里山の家」の外壁部分詳細




写真③ 27㎜厚杉板をバーナーで焼く作業

 最初の現場では、38㎜厚のサワラ材に雇い実加工を施してもらい、表面を建て主とともにバーナーで焼いてみました。燃料としてはプロパンガスのボンベを用意し、道路のアスファルト舗装などで使用しているバーナーをセットして、表面が炭化するまで焼きます。うっすら黒くなった程度では雨で流れてしまうので、表面が3㎜程度炭化するまでは焼き続けたいと言う気持ちで取り掛かるのですが、何しろ暑い作業なので辛抱できずに斑に焼いてしまうこともあります。木材の燃焼速度は一分間に0.6~1.0㎜程度なので、均等に3㎜炭化させるには3分~5分間は我慢して焼き続けないとモノにならなりません。節の周りはなかなか炭化しない反面、一箇所を焼き続けると板の角がボロボロに崩れてしまうこともあります。単純な作業ですが、板を均一に焼くのも経験がいるようです。

 3~4人集まれば、30坪程度の家の1階部分に張る板を焼く作業は一日で完了します。丁寧に仕事をしても二日やれば終わります。燃料のプロパンガスは、10000円~20000円程度で済むはずです。火を扱うことが日常生活から遠くなっている現代は、木が燃えていくのを見る快感と自分の家の素材を準備している充実感があります。ただ、ガーガーというバーナーの音と、多少の煙が出るので、周辺に迷惑にならない空地でないと、思い切り作業を続けることができません。近所の住人から通報されて消防車が駆けつける、という不祥事を起こしたことはありませんが、ゴミでも簡単には燃やせない時代では注意深く対応が必要です。それと、作業が終了したら、焼き杉板の上から水を十分に掛けて燃焼を完全に止めておくことが大事です。びしょびしょにしても板は腐りません。




写真④ 表面が深く炭化するまで続ける




写真⑤ 水を掛けて完全に消火させる
 
 最初に焼き杉羽目板を設計に組み入れてから10年近く経ち、建て主との作業も10回を超えました。1999年に計画した家の外壁は、軒がない環境に耐えて現在でもしっかり残っています。少し剥がれた部分もありますが、それが外観の味わいになってきて、なかなかいい感じです。1回目のみ38㎜の板を使い雇い実の仕様にしましたが、強く焼くと板の角が崩れてしまうので、2回目からは通し貫に使用している120×27㎜のスギ板を焼いて、板と板の合わせ目に目板を打ちつける仕様を続けています。この場合、目板には45×15㎜の乾燥したスギ板を使い、黒色の外部用自然風塗量を塗ってから、真鍮釘で止めます。

 建設省告示第1359号(改正平成16年7月7日国土交通省告示第787号および平成16年9月29日告示1173号)により、土塗り真壁造(裏返しなしでもよい)30㎜以上の上に木材12mm厚以上を張る仕様でも、防火構造として認定されました。つまり、準防火地域の2階建以下、床面積500㎡の住宅の延焼の恐れのある部分の外壁に使用することができるという訳です。土壁と羽目板、そのうちでも土壁と焼き杉がもっと一般に広まっていく時、この国の景観ももう少し落ち着いたものになっていくと考えます。

 ※ 細部の仕様については、建築資料研究社発行
   『住宅建築』2008年3月号を参照してください。






写真⑥ 1999年最初の焼き杉の外壁の現在