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 自然素材について
 
 建築で使う自然素材とは、それぞれの地域で比較的容易に手に入り、継続して使い続けられるもので、取り扱い方法が広く知られている材料のことをいいます。



 建主自主施工による竹小舞かき作業

    代表的なものは、植林と手入れを続けることで再生産が可能な木材、同じく農地で栽培される稲・井草、木材や草を原料として作られる紙など植物を原材料とするものです。
 もう一つは、粘土、石、石灰、プラスターなどの鉱物資源と、それらを利用して作られる漆喰や粘土瓦などの材料です。
  自然素材の最大の魅力は、時間の蓄積を背後に備えた限りない力を感じられる点にあると考えます。
 100年を超えて立ち続けてきた大木が、用材として切り出されようとする伐採現場に立ち会う人は誰でも、ある種の「畏れ」に近いものを経験するはずです。
 木、石、粘土などの元素材には、無限に広がる可能性があり、建築として材料の力をより活かす利用方法を考えることはとても楽しいことです。近年は、各地の小学校の教室は、再びムクの床板や羽目板に張り直され、事務所や店舗の内装が色土や漆喰で塗り直されるという話題に事欠きません。均質な工業製品に比較して、木の木目の表情や手触りや左官材料の質感に癒されるのは、おそらく、人類の歴史とともに関係を持ち続けてきた素材への安心感が元になっているのでしょう。

 ただ、木も土も草も自然の素材はすべて、素材本来の特性に合わせて使う時のみ、持っている特性が利用する側の思いに沿った結果となる点が共通しています。ほんの50年前のこの国で建てられる家は、そのほとんどの材料が自然素材でした。素材業者も職人も、それぞれの取り扱いを心得、きちんと守って納めるという技量も作法もありました。
 中でも、一番大切に考えられてきたことは、「素材が使える状態になるまで時間を掛けて待ってからでないと、建築材料として使ってはいけない」と先人の教えだろうと思います。急ぎすぎ、早すぎの仕事の失敗例をこれまで数え切れないほど見てきたばかりでなく、時として、私どもも時間を掛ける大切さをわかっていても実行できずに無残に結果に終わった経験があります。
 乾いていない木材は、乾く途中で曲がり、割れ、縮みます。粘土の粒子を繋ぐ役割をする藁スサが、じっくりと土に馴染むことのないままに使われた土壁はひどい割れ方をします。


竹小舞下地を風と光が通過するシーンは印象的です
 
 もう一つ、守りたいことは、木でも石でもある厚みや量感が備わったときにのみ、本来のらしさが発揮されるという点です。薄い紙ですら何枚も重ねて貼ることで、紙本来のふっくらとして質感がかもし出されるものです。



仲間が寄り集まっての荒壁付け作業は一種のお祭り
 時間を掛けて作り出される自然素材は、希少性が価値になる特徴がありますが、木も石も土も紙も限りなく薄くすることで量を増やして使うことが広まっています。
 残念なことは、せっかく時間の経過ともにいい味わいのでる素材も、そうはならないことです。
 工場を出荷されたときが一番美しく、時間の経過とともに貧相になっていく工業量産建材とあまり変わらない結果になってしまいます。
 自然素材の家は、特別な管理がいるものはありません。油やワックスで磨けば確かに木材の保護になり、自然な光沢が生まれて美しいものです。継続してできる家にとっては、自然の素材はきちんと答えをだしてくれますが、通常のそうじで十分だともいえます。
 3代・100年という時間軸での付き合いを始めるには、もう少し長い点検・補修などの心得が求められるはずです。