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現場リポート 深川の木造町屋
 ■ 柿渋塗り工事

 加工場で刻みと鉋掛けが終わった土台・大引・床束材には、耐水・防腐効果を高めるために柿渋液を塗ります。当事務所では土台に青森ヒバを使用していた頃(1988~1996年)は無塗装でしたが、土台に栗を使用し始めた1987年から現在まで全ての現場で柿渋塗を続けています。プロの塗装屋さんは柿渋を扱わないので、この作業は基本的には建主が行うものとし、当事務所のスタッフが補助員として一緒にお手伝いします。刷毛を用いて材木に塗って拭き取るだけの作業なので、経験の無い人でもいきなり始められます。自分達の住む家造りに体を動かして参加する最初の機会となり、毎回楽しんで取り組んでいただいております。
 柿渋液は生の渋柿を潰して絞った液を数年間樽の中で発酵させたもので、主成分はタンニンです。防腐・防水効果があるので、猟師が網を柿渋液に浸けたり、和紙に塗って傘や団扇を張ったり、ベンガラや墨を混ぜて板塀を塗ったりと日本人の生活にとっても身近な素材でした。長野県安曇野での家造りに通っていた頃数回立ち寄った果樹園にも渋柿の大木があり、実を潰して柿渋を作っていたとの話しを聞いたことがあります。渋の効用を活かす術を心得ていた先人が、少し前までどこにもいたということでしょう。



写真1  柿渋は鉄と反応するのでプラスチック容器使用

写真2  赤松材に薄めた柿渋液を刷毛で塗る

 材木の中でも一番腐りにくいので鉄道の枕木などに多用された栗ですが、栗の端材を水に漬けておくと水が真っ黒になります。栗の土台に柿渋を塗る理由は、栗材が雨に当たるとタンニンが流れ出て基礎など周囲を汚すため、同じタンニンを含む柿渋液で栗材をそっくり包んでしまう為です。柿渋液は赤ワインのような色の液体で用途に応じて水を加えて薄めて使います。目に触れない床下の土台や大引などの部材に塗る場合は、薄めずに原液のまま塗ります。や杉の柱赤松のタイコ梁などに塗る場合は、柿渋液1に対して水2の割合で加えた3倍希釈液を使うことにしています。
 柿渋液は速乾性の材料です。塗り斑ができると補修が出来ないので、刷毛で塗った後にすぐに後から布で拭き取る作業を行うことにしています。この作業を二回繰り返す二度塗を行うと部材にどの面も塗り斑の無い状態になります。塗った当初はあまり色がありませんが、日に当たると赤く変色します。夏の炎天下で柿渋塗を行ったことも度々ありますが、塗った傍から赤くなっていくので、室内の仕上げ塗装材に使う場合は薄め使うか、直射光の当たらない屋根の下での作業をお勧めします。柿渋染めがあるくらい衣服に付着すると洗っても抜けないので、作業着が必要です。胃腸薬にも使われていたので飲んでも毒はありませんが、赤ワインとはまったく異なる独特の匂いがあります。



写真3  塗った直後に布で拭き取り斑をなくす

土台のヒノキ材に柿渋原液をそのまま塗る

 材料の柿渋は、奈良県の㈱トミヤマから送ってもらい使っています。以前は18ℓ入りのポリタンクのみでしたが、最近は1.8ℓのペットボトルで必要な分だけ頼めます。今回の現場では、土台・大引・床束と2本の赤松タイコ梁に塗る分として、1.8ℓ入り4本(1890円×4本=7560円)使いました。加工場が広くて材料を広げて塗る作業を滞らず行えたので、一軒分の作業を延べ4人工で終了しました。自分達の家の材料に塗るのですから、ゆっくりと丁寧に仕上げることが大事です。家族総出で作業を出来れば何時までも記憶として残り、家が完成した後も大事にしたいという気持ちになるのでは、と期待しながらどの現場も続けている訳です。
  ㈱トミヤマの製品にカキトモという塗料があります。柿渋と混ぜて使う液体ですが、始めから薄茶色に発色して斑になりにくいのが特徴です。最近は当事務所でも、小屋梁の赤松タイコ梁が見えてくる場合にカキトモを使っています。成分未公開なのが残念ですが、安全性は問題ないと考えています。

写真5  塗った後のヒノキ土台

写真6  乾いた状態の柿渋塗り土台