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現場リポートⅢ 所沢の土蔵移築工事
 ■ 基礎工事

 土蔵造りと呼んでいる蔵の構造は、出入り口以外の建物周囲に軒桁まで達する通し柱が3尺(909㎜)間隔で建てられ、柱に取り付けられた竹小舞下地に8寸(24㎝)以上の土壁が付けられるのが一般的です。柱の寸法や仕上げまでの壁厚さは用途や普請の程度に応じて違いますが、蔵に求められる一番大事な機能は火から財産を守る耐火性能であるので、屋根や壁が厚い丈夫な造りになるのは当然のことです。一度建てればよほどの事情がない限り壊すことはしないので、建てる場所を選び後で故障がこないように地業(じぎょう)や礎石据付を入念に行います。柱の真下は基礎石が並べられますが、柱の外面に約5寸も付けられる土壁の重さを支えるために、受け石・チリ石と呼ぶ角石を連続して敷き並べていく点が一般の木造建築の基礎と違います。元の店蔵の解体工事の際に、使われていた受け石全て、ひとみ梁両脇の大黒柱を支えていた御影石製の礎石、観音扉下の煙返し石は移築現場に運ばれて再利用することになりました。
 さて、今回の移築工事の基礎工事に当たり、土蔵全体の重量がいったいどれくらいになるものか知るために、屋根・壁・木組みなどの重さを計算してみました。建物の重さと支える地盤の固さに応じて基礎の形式が決まってくるからです。計画は間口4間半(8.1m)奥行き2間半(4.5m)の二階建て母屋部分が壁厚30cmの純粋な土蔵造りで、前後に壁厚の薄い下屋を設けてあります。まず母屋についてですが、瓦が約6.5t、土壁が約50t、木組みが約3tの重さがあり、合計すると基礎上部だけでも60t近くになります。一方下屋は屋根と壁や柱の重さ全部でも6t程度です。土の塊である土蔵がいかに重い建物であるかがわかります。これに、人や荷物が乗るので母屋には一二階合計で13t、下屋には3.5tの積載荷重を加えたものが建物の重さです。
 計画地は都内区部の西に位置し、周辺は関東ローム層が厚く広がっているために地表面から60㎝程度掘ると赤土と呼ぶ締まった粘土が出てきます。関東ローム層の地耐力は1㎡当たり5tはあるとされ、実際に平板載荷試験を行うと10t程度出る良好な地盤です。鉄筋コンクリート造でも3階建てまでならベタ基礎でいけます。母屋部分を支える基礎をベタ基礎で考えた場合、基礎以外の上部構造の重さは固定荷重60tと積載荷重13tを加えた73tとなり、基礎底盤面積は44㎡あるので、単位面積あたりの負担は約1.7tです。厚さ20㎝の鉄筋コンクリート基礎の重量約25tを加えても、ベタ基礎で十分いけることがわかりました。


写真1  ユンボで根切り工事を始める

写真2  割り栗石を並べて底盤のレベルを確認する

写真3  捨てコンクリートを打設し墨出しを行う

写真4  鉄筋を加工し配筋する

 次に、元々土間で使われていた店蔵を住宅に利用する目的で新規の床を作る場合、1階床の高さをどのように設定するかが問題となりました。元の土台を隠すように床板を張ればよいのですが、そうするとこの店蔵の象徴とも言える巨大なひとみ梁の梁下が低くなりすぎて頭が当たることになります。ひとみ梁の下に建具を設けて本来の差し鴨居として利用する計画にし、玄関から部屋に入る際に潜るひとみ梁の下を179㎝確保することにしました。基礎天端が1階床面より高くなるため部屋に露出することになる土台や布基礎は板で覆い、大黒柱下の御影石製の礎石はそのまま室内に見せる設計としました。構造体骨組みの高さ関係が決まっている移築工事は、このあたりが苦労するところです。
 基礎の形式は通常のベタ基礎ですが、底盤の厚みと立ち上がり布基礎幅を20㎝とし、13㎜異形鉄筋縦横20㎝間隔モチ網ダブル配筋としました。布基礎の周囲には、柱外に厚く付ける土壁受けの受け石を載せる目的で20㎝広げて底盤を造ってあります。2階建ての住宅としては過剰とも見える仕様ですが、屋根に異常に大きい棟瓦が乗り、外壁が海鼠壁で仕上がるのを見ていると、長く持ち超える土蔵とするにはこれくらいが普通であることを工事が終了して実感しています。多少でも地盤に不安がある場合は、迷わず杭基礎を行うことをお勧めします。


写真5  コンクリートを打設し表面をコテで押える

写真6  立ち上がり部分の仮枠を組み立てる

写真7  尺角のケヤキ大黒柱下の礎石

写真8  建て方直前に架設足場を組む