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 2007/06/25 土台敷き・建て方が始まる
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





柿渋塗りの5寸各クリ土台を基礎に設置していく


 建て方工程は、工事の花です。家造りの全工程の中でも、建て方作業はハイライトシーンが続きます。数百に及ぶ材木が初めて一つの建物として立体的に組み上がるわけですから、わくわくするのも当然です。

 一方、大工棟梁にとっては、寝床の中で現場での木組みをあれこれ想像して、前の晩は眠れないほど緊張することもあると聞きます。

 伝統的な軸組み構法の場合、土台・柱・梁・桁など数百本以上の部材を差して組み合わせ、楔や込栓やダボやシャチ栓などの堅木で締めて部材の接合部を固めていきます。収縮したり曲がったりする木の特性に合わせて、木を組んで造る木組みの家と言えるこの方法は、各接合部に木工技術の知恵が結集されています。

 集成材利用・プレカット工場での簡略仕口継ぎ手加工・接合部金物固定・筋違と合板依存の変形防止策など、最近の在来木造とは違う技術体系の構法だと考えています。

 現在では、この工程を見守ることが貴重な経験であり、設計を続けていく上でも重要な学習の場にもなっています。

 建て方は、土台の据付けから始まり、柱を立てて差し鴨居・胴差し・床梁なとの横材を組み、床板を支える甲乙梁を大梁の間に組入れていきます。平屋建ての場合はこの後に小屋組みとなりますが、二階建ての場合は、同様に二階の柱を建ててから屋根まわりの仕事に移ります。

 柱に開けたホゾ穴に横材のホゾを差し込んだり、梁と梁を渡りあごで組む工程は、慎重さと共に大胆さも求められる連続作業です。柱をある程度強引に、曲げたり上げたり開かせたりしながら梁を組み込む作業をみていて感じるのは、木材は実に粘り強いということです。

 部材をひととおり組み上げたら、建入れ直しと呼ぶ取り付け部材の垂直を矯正する作業を行います。ワイヤーで引っ張り垂直が確認できたら、一度仮筋違いと呼ぶ部材を大きく斜めに留めて軸組みが変形しないように固定します。この後に、各接合部に楔や込栓やダボやシャチ栓などの堅木を打ち込んで軸組み全体を締めて固めます。接合金物に頼り過ぎない伝統的な木組みの家づくりにあって、接合部を硬く組んで木の栓やクサビで固定する作業はとても重要です。なお、仮筋違いは竹小舞を掻いて荒壁を付けたらはずします。

 現在は、部材の荷揚げと移動は重機を頼んでクレーン作業中心ですが、建て方の順番と段取りを判断するのは、経験を積んだ大工棟梁です。この現場の場合、他の組の大工衆7人が呼ばれ、全員で10人での作業が行われました。梅雨時の作業です。一日でも早く屋根をかけて部材に雨が当たるのを防ぎたいと考えた棟梁の判断です。若いが、経験を積んだ大工衆のパワーは驚くべきものがあります。柱の建て方からわずか3日間で野地板が張られてしまいました。協力に馳せ参じた大工にとっても、伝統構法の現場での体験は貴重です。公然と他人の技を盗む場でもあります。最近当事務所の建て方では、少人数で仕事をこなしている大工衆が、建て方の時はお互いに声を掛けて協力しあうことが増えてきました。このような経験を経て、20代の若い大工がどんどん力を付けて成長しています。



土台と大引き据え付け完了状態



通し貫を入れながら、奥の柱から建てていく



柱の立て込み作業が完了し、梁材が搬入された



建物中央の尺8寸8角形赤松柱と卓を据え付ける



柱と梁のホゾを確認する棟梁の目がするどい



アカマツの太鼓梁を掛矢で打ち込む



梁と梁を重ねて固める作業が慎重に続く



床梁の上に手際よく甲乙梁設置していく



二階までの柱と梁が組み終わった。美しい!



二階柱に小屋梁と母屋が取り付けられた



入母屋の隅木と鼻母屋を組む難関作業