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 2008/03/20~ サッシ・シャッター工事
現場リポートⅡ 神田の耐震補強工事

□現場報告
  ビルに囲まれた都心で、築46年の木造住宅の耐震補強工事に携わっています。住み慣れた場所で、直しながら代々住み継いでいくことの価値が注目されている時代です。リフォーム工事の内容を紹介しながら、安心して暮せる住環境を考えてみたいと思います。




写真① 網入りガラスを入れたアルミサッシ


 この国で建てることができる建築の内容を取り決めた建築基準法の第64条に、外壁の開口部の防火戸を定めた規定があります。建築関係者以外は決して見ることのない法律ですが、住宅の窓やドアの作り方を決めている内容なので、紹介しておきます。

 「防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が準遮炎性能〔建築物の周囲において発生する通常の火災時における火炎を有効に遮るための防火設備に必要とされる性能をいう。〕に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。」 わかり難い法律ですね。

 この法律で言う延焼のおそれのある部分とは、敷地境界線や道路中心線からの距離が1階においては3m、2階以上においては5m以内をさします。防火地域や準防火地域に指定されている地域自体はたいてい都市部の密集地域ですが、30坪程度の敷地ではほとんど外壁全部が延焼のおそれのある範囲に入ります。その結果、防火地域・準防火地域内にある住宅の窓は、一般的にはアルミサッシに網入りガラスを入れものということになります。鳥かごのような網の中での生活はご御免被りたい! と考えるのが通常の感覚であると思いますし、法律的には防火設備(窓)の種類を特定するのでなく、技術的な性能があればいいとしています。それでも、ほとんどの場合コスト上の理由で網入りガラスの入ったサッシを選ぶことになります。三鷹の新築工事の現場リポートでも書きましたが、木製建具の性能実験がもっと進めば、いずれ現場製作の木の窓が防火設備として認定され、住宅の現場に復活する時代も来るはずだと考えてはいます。過渡期にある現在は、粘り強く多くの可能性を検討していく時のようです。

 1962年に建てられた当時、この家の窓や出入り口戸は木で作られたもので、ガラスも網入りではなく薄い型板ガラスがはめられ、改修工事を始める時点でも幾つかの窓は当時のままのものが残っていました。都市景観上は、長く親しんだ木製の窓には親しみもあり、取り外して再利用できるものならば使ってほしてとの要望が建て主からありました。ただ、この地域は全部が防火地域となっているため、木造の住宅をこの場所に残して改修する以上、窓の性能も現在の法律に合わせ、網入りガラス入りのアルミサッシという選択をしました。基本的には、アルミサッシの内側には障子を取り付ける仕様にしていますので、無粋なアルミ枠はほとんど気になりません。

 窓や出入り口に要求される性能の一つに防犯性能があり、最近は特にこの点についての関心が高まっているように感じます。近くに幾つかの大学や専門学校があり、駅周辺の繁華街にもそう離れていないため、建物周辺は夜間でも人通りが多い場所です。実際、工事中に建物の中に何者かが侵入して飲食をしたばかりでなく、柱や枠の一部がカッターで傷つけられるという事件がありました。幸い火を付けられた訳ではないので建物は無事でしたが、しっかりとした防犯性能を真剣に考える必要のある地域なのだと理解しました。前面道路側には防犯を主目的にした軽量シャッターを玄関と土間のそれぞれに取り付けることにしました。老人の一人住まいの生活では、これくらいしておかないと心配で夜も眠れないという地域があるのです。

 スチールシャッターを取り付けたことで、その内側には木製の玄関戸や土間のガラスを設けることが可能となり、シャッターを開けている日中は、現場製作の木製の建具が通りに面して吊り込まれて建物の顔になっています。

  住宅の改修工事は、これからの建築工事の大きな分野となるはずです。ただ古くなったから、飽きたから、不便だからという理由で全てを解体してまた建て直すのではなく、部分的に、あるいは大掛かりに手を入れながら住み続けることの良さが、少しずつではありますが見直されてきています。一方で、この国の建築の作り方を決めている建築基準法や同施工令や告示は、まことに頻繁に変更が繰り返されている法律です。少し前までは合法であった建物も、法律の改正(改悪)とともに現在の法律には沿わない、既存不適合というレッテルを貼られた建物となることが日常的にあります。今回のように、全面的な改修であれば、防火設備(窓)についても法律に合わせて直すことができます。しかし、防火指定のない時代に造られて、その後で準防火の指定がされた地域の建物の場合などは、少しの手直しや増改築をするにも工事に関係のない部分まで直すことが要求されてしまい、実際工事ができないか、申請をしないで工事を行うことしか選択がないという場合も、よく耳にします。

 建物の強度や安全性を上げること自体は、悪いことではないはずです。ただ一方で、長寿命の家づくりには避けられない改修工事にあたっては、自己責任という責任の取り方や他の方法で対応する道が開けないものか、考えていく必要があると思います。





写真② サツシの周囲に防水テープを貼り付ける




写真③ サッシ枠の周囲に木製の枠を付ける




写真④ シャッターのスラットを取り付ける




写真⑤ 全部のスラットをケースに巻き込む




写真⑥ ガイドレールに沿わせて上げ下げ確認