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 2008/02/01~ 木工事・耐震補強
現場リポートⅡ 神田の耐震補強工事

□現場報告
  ビルに囲まれた都心で、築46年の木造住宅の耐震補強工事に携わっています。住み慣れた場所で、直しながら代々住み継いでいくことの価値が注目されている時代です。リフォーム工事の内容を紹介しながら、安心して暮せる住環境を考えてみたいと思います。




写真① 新規間仕切りの4寸角土台と5寸角柱


 耐震補強工事の目的は、いつか起きる大地震の揺れに対して建物が倒壊しないように実現可能な方法で 補強することです。

 1995年の阪神淡路大震災の際、木造住宅で見る限りでは、古い家屋に被害が集中しており、倒壊した建物にはいくつかの共通する特徴が報告されています。
 ①揺れに対して抵抗する軸組みや小屋組みの構造体が細く、壁量も少なく偏って設けられているため、 窓の大きく開いた南側や店舗や車庫などの出入り口部分のゾーンが大きく振られて傾いたり倒壊したもの。
 ②変形を止める筋交いが設けられていても、土台・柱・梁などへ丸釘2本程度で留められているものが多かったために、強い揺れが起きると接合部が外れてしまい役にたっていなかったもの。
 ③湿気の多い地際の土台や柱の根元が腐食菌やシロアリにより腐ってしまい、しっかりと固定されていないために重い土葺きの瓦屋根などの家で瞬時に倒壊してしまったもの。
 ④柱間の広さの割には部材が細く、水平方向のゆがみを防ぐ部材がないために建物全体の変形が大きくなって倒壊したもの。

  最近では、地盤の揺れを上部の建物に伝え難くする免震構造の技術が開発され、実際の建物にも応用さ れていますが、比較的部材の細い在来工法の住宅の場合、耐震補強の方法としては次のような項目を調査して実行することが多いようです。
 ①耐力壁をどちらの方向にもバランスよく配置すること。
 ②柱・梁・筋交いなどの部材端部の接合部を固めること。
 ③2階床や小屋組みなどが横揺れでゆがまないように固めること。

 つまり、太い柱梁部材を組み合わせて通し貫土壁を用いた伝統的工法のように、揺れても復元力がある構造ではない建物の場合は、とにかく変形しないように全体と端部を固めるという手法です。

 今回の現場では、
 ①耐力壁の配置の確認と補強については、全面開口であった1階道路側の壁の両端に幅90cmの壁を設けることにしました。次に、室内の壁がなかった1階内部に、長方形平面の短辺方向と長辺方向のどちらか らの揺れにも効く間仕切り壁を設けました。
 ②既存の柱や梁は3寸3分(100mm)角や3寸5分(105mm)角の部材が中心で、それぞれの接合部をさらに接合金物で補強してみても、全体の耐震性能が上がるとは考えにくいため、既存建物の外周柱の外側前面に12mm厚の針葉樹構造用合板を張ることにしました。さらに新規に設けた内部の間仕切壁にも、同様に構造用合板を張ることにしました。
 ③建物の水平方向の補強については、全面的な土間であった1階に床組みを設けました。2階は105×45mmの根太を30cm間隔に並べた上に、外壁と同様に12mm厚の針葉樹構造用合板を張りました。
 ④新規の土台には、80年生の4寸角ヒノキの芯材(赤み材)を、柱には80年生の4寸角と5寸角の杉材、小屋梁には杉の平角材を使用しました。いずれの材も、静岡県天竜の新月伐採葉枯らし天然乾燥材です。細くて途中で折れてしまう危険のある既存部材には、横から新規部材を抱かせてボルトで接合して補強しました。

 構造用合板を壁や床の補強として多用して全体を固める方法は、構造用面材を始めから主な耐震要素と考える2×4工法や構造パネル工法と同様であるといえます。細い部材を活かして緊急の補強を考える場合、今後も面材利用は効果的な工法の一つになるはずです。現在築46年の住宅が、このような方法での補強により、今後また一世代残って使われれば、建築当初から数えて80年近い寿命の建物に変わることになります。山の林業の生産と合わせて考えれても、木の生長と更新に十分な長さであると考えられます。

 社会的に資材が不足していて、とりあえずの住宅を大量に生産する必要があった戦後まもなくと、都市への人口流入が著しかった高度成長期の木造住宅は、今回の現場のように3寸5分角中心の細い部材で構成されるのがごく一般的でありました。そして、日本の木造住宅の造り方にいまだに大きな影響を与えている『住宅金融公庫仕様書』にあるように、こうした細い部材どうしの接合部は、補強金物でしっか りと繋ぎ合わせておくことが家の強度を保つために必要なのだと考えます。さらに、構造用パネルとの 組み合わせで、より変形しにくい構造体とすることができます。
 しかし現在この国は、使われることを待っている国産材が大量にある時代です。長寿命の家造りを考える際に、各地に残った伝統的な造りの住宅が参考となりますが、戦後在来工法の部材断面より数段大きな柱や梁などの木組みは、今後の家づくりにも取り入れたいものです。4寸角、5寸角を中心に大きな断面を積極的に活用すること、国産材を適材適所にふんだんに活用することで、家造りのお金が山の維持管理の費用に還元されるわけです。30年後にこの地に再び新築の木造建築が計画されることがあれば、ぜひとも大きな断面部材で構成された22世紀まで残るものであってほしいと思います。
 




写真② 新規柱と2階床梁の伝統的な接合部




写真③ 1階新規胴差と既存通し柱の補強




写真④ 2階の床梁と根太




写真⑤ 2階根太の上に構造用合板を下張りする




写真⑥ 小屋組みと杉の野地板