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 2008/01/25~ 基礎補強工事
現場リポートⅡ 神田の耐震補強工事

□現場報告
  ビルに囲まれた都心で、築46年の木造住宅の耐震補強工事に携わっています。住み慣れた場所で、直しながら代々住み継いでいくことの価値が注目されている時代です。リフォーム工事の内容を紹介しながら、安心して暮せる住環境を考えてみたいと思います。




写真① 根切りと砕石均し転圧工事


 建築の基礎の役割は、二つあります。一つは屋根・壁・床など建物の自重と、家具や人などの積載荷重と、地震や台風などの外力が建物に与える力を安全に地盤に伝えることです。もう一つは、地盤の沈下や変形が起こったとしても耐えることで、上部の建物に影響を与えないようにすることです。この二つの役割を満足する基礎を計画する際に最初に行うことは、建物が建つ地盤の特性を知ることです。岩盤・固めの粘土層・軟弱な粘土層などによって地盤の長期に渡って支えられる力の限度が決まっているため、基礎の形式も地盤の強さに応じて使い分けます。

 今回の耐震改修工事の建物が建つ場所は、神田川と日本橋川に囲まれていて地盤が弱いと判断される地域です。この建物が建てられたのは1962年ですが、当時の基礎は束石状のものからコンクリートの布基礎に変わっていった時期で、鉄筋が入っていない無筋コンクリートの基礎が普通であったようです。この住宅の場合、この建物の一階は店舗や作業所として使われていたため、内部にはほとんど壁がなく、結果として基礎もありません。周囲の布基礎も底盤がほとんどなく、砂利を敷いてわずかな厚みのモルタルを均した上に無筋コンクリートの布基礎でした。さらに、建築当初からの期間に基礎の亀裂が発生している部分も見受けられました。

 以上の状況から判断して、基礎の補強は既存の布基礎の横に穴を開けて支えとなるアンカーの鉄筋を打ち込み、新たに建物の内側全面に鉄筋コンクリートのベタ基礎を設けることにしました。新築工事であれば、柱状改良方式による地盤改良を行うことも検討項目ですが、木造の軸組みを残しての補強工事の場合、鉄筋コンクリートの打ち増し一体化補強が一般的です。

  工事は、まず既存の土間コンクリートを剥がしてから、砕石を10cmの厚みに均して転圧した上に防湿フィルムを敷きます(写真①、②)。次に、D13の異形鉄筋を225mm間隔で縦横モチ網状に配り、幅15cmの新設布基礎部分に立ち上がり配筋を入れます。既存の布基礎に開けた穴に鉄筋をアンカーしてから、ベタ基礎や平行して設ける新規の基礎の鉄筋一体となるように重ね定尺をとります。コンクリートは、圧縮強度21N/mm2、スランプ18cmの調合のものを使用し、厚さ15cmのベタ基礎、立ち上がり布基礎の順に打設します。

 数十年を経過した住宅の改修工事の場合、ある程度は事前調査に基づく計画通リに進めますが、現場での対応をその都度考えて決める内容も発生するものです。

 一階の新規に間仕切り壁や床組みを支えるために、内部の立ち上がり布基礎も設けました。
  基礎のなかった全面道路側の建物外壁下に、新規に布基礎を設けました。
 一部亀裂が見られた既存の基礎は、土台をはずして解体し、新設の基礎を設けました。写真③
 旧基礎の底盤がないため配管用掘削後、土留め用立ち上がり布基礎を打設しました。写真④
  浴室廻りは、地盤面から約95cmまで布基礎を立ち上げて土台を敷くことにしました。
  堀コタツまわりの基礎は、逆に下げたベタ基礎を設けました。写真⑤
 腐食していない土台はそのまま残し、新しい土台下に通気のためのネコ間モルタルを付けました。

 基礎工事と給排水衛生の配管工事は重なることがありますが、付設する配管の位置や高さによって段取りを決めます。今回は、建物周囲に外配管を埋設する空きがなく、床下配管をする高さも難しいために、基礎の根切りを行った直後に給水・給湯・排水のそれぞれの管を、所定の位置に正確に立ち上げるという手配にしました。土間の鉄筋の間隔がずれる場所や配管立ち上がり周辺には、鉄筋補強を施しました。

  街中の工事は新築の場合でも同様ですが、基礎のコンクリート打設に当たってはミキサー車やポンプ車などを一時停めておくために、道路使用の許可を地元の警察署に求める必要があります。さらに、通行人の安全確保のために、車の前後に立つガードマンを警備保障会社に要請することも必要です。設計事務所が設計監理と同時に施工管理(CM)を行う場合、こうした緒手続きを円滑に処理していかないと工事は進んでいきません。



写真② 設備配管完了後防湿フィルム敷き




写真③ 旧基礎を撤去し新規で行う部分(右側)




写真④ 土留め用布基礎と配筋




写真⑤ コンクリート打設直前の配筋状態




写真⑥ コンクリートの打設模様