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 2008/03/30~ 竣工祝い
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





ぴかぴかの竣工後の全景

 昨年1月に既存住宅の解体工事から始まったこの家の工事も昨年12月に終了し、新年を新居で迎えることができました。その後、家の周囲に家主の手で植栽が行われ、少しずつ新居での生活になじみ始めた桜の季節に、職方衆を呼んでの竣工祝いの席を設けていただきました。職方衆・当事務所・建て主・親戚など20名以上の方が集まっての楽しい時間をすごしました。

 建築工事は、最初に工事の安全を祈る地鎮祭、柱・梁と小屋が組みあがった時に行う上棟式、そして完成してからの竣工祝いと、三回の祝い事があります。無事に工事が終わり、屋移りも済んでから行う祝いの席には、仕事をさせていただいた事への工事関係者からのお礼とねぎらいと、これからの維持管理に対しての建て主側からのお願いという、二つの意味合いがあると思います。さらに、分離発注建て主直営工事では、施主は依頼者であり、同時に工事関係者の一員でもあるという立場であるため、職方衆との仲間意識もだいぶ強いものになっていることが多いようです。各職方が携わったそれぞれの仕事を、紹介し、承認し、そして祝福することで、関わった工事に一応の区切りを付け、また新しい仕事に向かう節目の行事として竣工祝いは大切だと考えています。

 ただ、人寄せは主催者にとって多少の苦労がともなうものです。できる限り建て主の負担を少なくするために、会費制として集めたお金を職方全員から経て主へのお祝いとして進呈することにしています。お祝いの席に酒はつき物ですが、いい酒を各自が持ち寄って皆で楽しむことにしています。建て主には新しい家で、席と多少の食事を用意してもらうことで、上下関係のない仲間内での自由な意見が述べられる場が毎回続いています。この日も、建て主の挨拶、棟梁の挨拶と乾杯、酒宴半ばでの参加者全員の挨拶、中〆、本〆と、昼から4時間あまりの会となりました。

 さて、落語の「牛ほめ」は、世間常識や礼儀作法などを示していわゆる「ばかのひとつ覚え」を笑いに仕込んだ噺ですが、与太郎が小石川の伯父さんの家の新築をほめに行く前に、親父が与太郎に一つ一つほめ方を教える内容は今でも参考になります。 「このたびは、ご普請が立派におできになりまして、おめでとうございます。さっそく、お家を拝見に上がりました。失礼でございますが、木口の高いところ、工手間の高いところをよく行き届いてできあがりましたねえ。家は、総体檜造りでございますな。左右の壁は大阪土の砂摺りでございますな。天井は薩摩の鶉杢でございますな。畳は備後の五分縁でございますな。結構なお庭でございます。お庭は、総体御影造りでございますな。」と最上級の仕様を並べ、建てぬしを褒め上げて気分を良くしてもらおうとします。実際には、檜材は別としても、左官の大阪土水捏ね仕上げも、屋久杉の杢目天井板も、備後表に極細縁の畳も、現在では施工不可能と思われるほどの超高級仕様普請です。多少でも建築を知っている人に対しては、いやみなほめ殺しそのもの、と思われる内容で笑いの世界に留めておくべき内容となったことに時代の変化を感じます。

 もう一つ、家を愛でる順番を示した言葉に、「一壁、二襖、三天井、四畳表、五に柱」というものがあります。家の各部位を見ていく場合に、塗り壁→建具→天井→畳(床)→構造材の順になったのが不明ですが、目に入る部位の面積が多いものから順に見ていくと良いと考えられたのではないかと想像します。

 この日の挨拶の一つに、「できる限りの知恵と力をだして、精一杯つくりましたので、どうか大切に使っていただきたいと思います。」との言葉が若い大工からありました。おそらく、その場にいた全員が同じように思っていたはずです。建て主の挨拶としての、「10年後、30年後にはもっといい家になっていると思います。」の言葉も心に残ります。一人ひとりの担当職方と建て主の結びつきが、また一層強まったのを感じた祝いの席でした。








始めに建て主の挨拶




棟梁からの挨拶と乾杯




参加者全員の挨拶