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 2007/08/01~ 工事概要と建物の事前調査
現場リポートⅡ 神田の耐震補強工事

□現場報告
  ビルに囲まれた都心で、築46年の木造住宅の耐震補強工事に携わっています。住み慣れた場所で、直しながら代々住み継いでいくことの価値が注目されている時代です。リフォーム工事の内容を紹介しながら、安心して暮せる住環境を考えてみたいと思います。




周囲ビル化した築46年の建物正面

 昨年は、日本海に面した輪島や柏崎で地震がありました。一人暮らしの老人が被害を受けたことから、各地の自治体は老朽化した住宅に住む高齢者を対象に、耐震補強の補助金給付制度を活用して住まいの耐震化を少しでも早く図りたいと考えているようです。自治体にもよりますが、一軒あたり100万円の補助金を受けられるのであれば、その範囲でできる工事を行うだけでも、倒壊によってかけがえのない生命を失わないですむ安心感は得られると思います。

 ただ、家の耐震補強は重要な課題ではありますが、筋交いや構造用合板を打ち付けての部分的な補強ではすまない住居や、居住性もあわせて考える総合的なリフォームに発展する住居も多く、補助金制度を活用しての耐震補強が国中で一期に進んでいる様子はありません。家の管理に対して、まめに各部を点検して少しずつ手を加えていこうとする人が少ないのか、既に愛着もわかないほどひどい状態なのか、手入れに際しての連絡先や依頼先がわからないのか、事情は様々あるにせよ、定期的に発生する地殻の変動が原因で起こる地震と向き合う必要はあります。

 今回報告する都心の改修工事も、一人暮しの高齢者の住まいを対象にした自治体の調査がきっかけでした。1962年築造の木造瓦葺き2階建て店舗併用住宅は、道路に面して1階部分に耐震要素がなく、非常に危険な状態にあると判断した自治体が、家族に耐震補強補助金制度の活用を促していました。しかし、この自治体では、家族が介護も兼ねて同居する可能性のある場合は、同居人も65歳以上に達していないと補助金の活用はできないという制約を設けていました。足がやや不自由になりつつあるために、一刻も早く工事に掛かりたいと考えた家族は、結局耐震補強の補助金を受けずに自力で直すという選択をしました。

 工事を始める際の申請手続きについて、役所の関係する係りと打ち合わせを行いましたが、構造、規模、用途などの変更を伴わない耐震補強であれば、建築確認申請は不要との回答をいただきました。しかし、地域全体が防火地域の指定を受けていて、木造建築の新築は認められないため、一度解体してしまうと再築はできないので、中心となる構造体を残しながらの補強を考える必要があることも助言されました。さらに、土地の権利が所有権でないために、解体して鉄骨造や鉄筋コンクリート造とする場合には、地主の承諾と更新料の手続きなどの問題も発生するために、修繕という方法が適切と判断しました。

 地域の住民にとって、その場所に住み継ぐ意志がある限り、だれもそれを妨げることはできません。都心の機能が住居よりも集約的な事務労働に適するように、周辺の建物が建て替えられ高層化されたとしても、同じ場所で商売や生活を続ける家族は無くなりません。逆に、オフィスビルの建築に当たっては、ある割合で住居部分を併設することを義務付けることで、都心に住人の再び増やそうとしているのが実態です。数十年間住み続けきて生まれた人の付き合いの深さ、買い物や公園や憩いの場所を含め地域の特性を良く知っている安心感などが、直して住み続ける理由になっています。

 さて、耐震補強も改修工事も、始めに行う必要があるのは、建物の事前調査です。間口3間・奥行き4間半の住宅の一階は、店舗や印刷関係の作業空間として利用されていたために、階段と便所周辺以外に壁や柱はありません。事務所と住居として使われていた二階には柱や壁が多いのですが、構造部材の寸法が3寸3分から3寸5分中心で細いものでした。外壁は、モルタル塗り下地に吹き付け仕上げを繰り返してきたのでひどい劣化はない反面、各部に長い亀裂が確認されました。屋根は瓦葺きですが、新築以来一度も手入れを加えたことがなく、雨漏りも発生していたと聞きました。

 目視で確認できる範囲を超えるものは、既存建物の一部をはがしてみる必要があります。特に、二階床梁の構造や筋交いや土台を確認する目的で、同意の上で一階の天井と内壁をほとんどはがす事前調査を実行しました。その結果、二階の床を支えている梁は軽量鉄骨材を合わせて使用したものであること、筋交いは大きく入っているものの端部が釘二本で打ち付けられていたこと、二階に床組には火打ち梁が数本設けられていたこと、などの内容がわかりました。おそらく当時の平均的な造りであっと思います。

 補強方法や居住性の向上に向けての計画作業は、建築当時の図面が残っていないため、一度現状の状態を正確に図面に起こしてから始めることになります。



雨樋や配管が見える建物側面




外壁の亀裂が確認できる




天井と壁を剥しての確認作業




二階軽量鉄骨梁と火打ち梁




筋交いと外壁下地板