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 2007/11/12~ 石・タイル工事
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





浴槽を据え、排水口を取り付けます

 木や土や草などの自然素材を、構造材や仕上げ材に多用した家づくりを続ける理由として、「自然の素材は時間の経過とともに味わいのある古び方をするから」という回答があり、当事務所でもそのように答え、活字にしてきました。「工業製品は劣化の仕方が貧相で美しくないものが多く、特に石油を原料とした製品はその傾向が著しいように感じる。」などと雑誌などに書いてきました。基本的なスタンスに変わりはないのですが、一方で浴室、洗面所、台所など水を使う場所の床や壁の仕上げ材には、タイルというとても優れた工業製品に常日頃からお世話になることが多いのも事実です。粘土を成型して火で焼くと変化しない焼き物となり、材料や焼成温度によって表情も豊かで羽目板などのムクの木との愛称も悪くありません。釉薬を掛けたものは、千変万化の種類があり、色も絵柄も見ていて飽きないほど種類は豊富です。
 
 タイルを選ぶ場合は、カタログの印刷された写真では質感がわからないため、その都度見本をメーカーから取り寄せて確認します。種類があまりに多いので、浴室の壁に青森ヒバやサワラなどの羽目板を張り、台所の壁に色土を塗った場合、素材の釣り合いを考えて、INAX社のミイティキラミツクMO2(やわらかい白色)マット釉仕上げ200角を、定番として使用してきました。現在でも時々使用し、無難な選択で悪くないのですが、タイルを張った横にある羽目板の木目の豊かさ、コテで塗り上げた色土の表情の奥深さに比べて、釉薬を掛けて綺麗に作られた日本のタイルはおとなしく,素材感という点で自然の素材に力負けしているようにも思えることもあります。
 
 最近の当事務所の傾向として、浴室の床と壁には十和田石などの自然石を、台所の壁には手作りの痕跡が残るイタリア製のタイルや、無釉の磁器質タイルなどを選択する現場が続いています。これらの自然石やタイルに共通しているのは、表情の豊かさという点です。十和田石は薄緑色に灰色が混じり、水に濡れると緑色が際立つ美しい石ですが、石特有の色幅があり、乾いた状態でも樹齢100年を超える青森ヒバの羽目板などとよく釣り合います。イタリア製のタイルは、製作する職人の国民性が現れているせいか、タイルの端の線も曲がっているし、直角でなかったりしているので現場で貼り付けるタイル職人泣かせの製品が多いのです。しかし一旦壁に張りあがってみると、工業製品なのになんともいえない表情が出てきます。無釉薬の磁器タイルは、備前焼の焼き物のように焼き上がりが一定ではなく、火の回り具合や粘土の素材感が現れていて、とても自然な感じがします。油の飛沫が飛ぶコンロ周りに用いても、油で汚れて困るという苦情もありません。
 
 ムクの木や色土は、人間には作り出すことのできない自然素材特有の表情と力があります。木目やコテ痕などもコピーした仕上げ材は、時間の経過とともに情けなくなるくらい貧相な変わり方を経験しているので、とてもまた使う気にはなりませんが、焼き物のタイルは原材料が粘土であり、人の作為が火という力を潜り抜けて誕生するため、工業製品とは言いながら、限りなく神秘的な力を持つ製品もあります。この国でのタイル生産の先駆者である久田吉之助や池田泰山などによって、大正時代に始められたタイルは現在、表情・性能・表面仕上げ法・工法など日々進化していると考えていい分野です。タイルという乾いた気候の国の文化が、高温多湿モンスーン型気候の国で、住まいの仕上げ材としてどのように溶け合っていくか、始まってようやく100年経過したところです。これからも微力ながら可能性を探っていきたいと思います。

 今回の現場では、浴室の腰壁と床に伊豆若草石、トイレの腰壁と床に半磁器タイル、玄関土間に御影石を張って仕上げました。伊豆若草石は、凝灰岩の一種で滑りにくく、青みがかった表情が美しいので浴室用に石として長い間好まれて用いられてきた自然石です。今から約2000万年も前に起きた地殻変動と、海底火山の噴火活動により海底に堆積した火山灰や溶岩が変質して出来上がった石だそうです。最近では、天然ゼオライトであることや遠赤外線効果やミネラル成分など、敷石を離れてこの石の特長をだした製品も販売されています。静岡県で採掘が続いていますが、現在の採掘場での生産は終了で、新しく採掘場を検討しているとの状況であると聞きました。




カッターで所定の大きさにそろえます



伊豆石を越壁に張りつけていきます



水栓まわりを慎重に決めていきます



モルタルを付けて御影石を張ります



仕上げ面の水平と勾配を確認します