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 2007/10/19~ 内壁左官仕上げ
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





仕上げ材の塗り見本を作製して表現を決めます


 内壁の仕上げ材には、塗り壁、羽目板張り、紙張り、塗装、タイル・石張りなどがあり、部屋の使用目的や環境などに応じて使い分けます。水が掛かる浴室の腰壁はタイルや石張り、湿気が多い浴室や洗面所の壁は板張り、また居室には腰板と塗り壁の組み合わせも一般的に行われる仕様です。壁紙張りとする場合、石油等の化石燃料から作り出すビニールクロスでなく、再生可能な植物を原料とする和紙や月桃紙などの自然素材を使うことにしています。手漉きの和紙を袋状に重ねて数回張り重ねる方法は、紙という素材のふっくらした質感を最もよく表わす工法ですが、大変手間が掛かります。最近では土佐和紙壁紙や月桃紙などの機械漉きロール紙の種類も増えてきているので、石膏ボードに直に張ることにしていますが、経済的で質感もいい空間が生まれます。
 
 外壁を竹小舞土壁塗りとした場合、室内側の仕上げは荒壁に斑直し塗り・中塗り土塗り・仕上げ塗りという工程で進めるのが自然なので、仕上げも塗り壁ということになります。間仕切り壁も竹小舞荒壁塗りとし、外壁と同様の工程を経て塗り壁仕上げとすることもあります。しかし、仕上げは同じでも間仕切りは石膏ラスボード下地を採用する方がコストを下げられるため、外壁:竹小舞土壁塗り下地、間仕切り壁:石膏ラスボード下地という仕様が多いのが実情です。当事務所ではあまり採用しませんが、平滑面の石膏ボードの表面に接着剤塗布後、仕上げ材一回塗りの超薄塗り仕上げという工法もあります。安くできますがこの工法の欠点は、塗り厚が非常に薄いためにボードの継ぎ目で必ず割れるということです。建物のゆれはボードの接合部の微妙な動きを引き起こし、さらに細かい粒子の結合体である左官材料に力が伝わって壁に亀裂が発生するからです。
 
 今回の現場で行われた施工の工程は、石膏ラスボード下地の継ぎ目にジョイントテープ張り、下塗り用既調合石膏塗り(Cトップ)下擦り、追っかけ中塗り土塗りコテ押さえ箒引き、一週間程度の乾燥期間の後に再度中塗り土塗り、水引を見て追っかけ色土塗り撫で切り仕上げ、という流れでした。下地から仕上げまでの塗り厚は12~15ミリです。下塗りは下地材との接合強化を目的とし、中塗りは仕上げ材が均一の厚みで塗れるように平滑面作りを目的とし、仕上げ塗りは目的の見え掛かりづくりを目的としています。塗り重ねの作業には、それぞれ大事な役割があって行われるわけですが、ある程度の厚みを持つ壁は、建物自体のゆれや動きの力を各塗り層間で少しずつ吸収することで、最終表面仕上げ材の亀裂などを防ぐ効果が期待できます。塗り厚が20ミリ程度確保できるのであれば、中塗り土を数回に分けて塗る工程に割れ止めのメッシュや寒冷紗を伏せ込むことができるので、さらに丈夫な壁が出来上がります。
 
 工期短縮・コスト低減の時代にあって、下地が石膏ラスボードの場合、多くの現場では中塗り土を塗る施工は省略されてきました。塗り厚数ミリの薄塗り仕上げでは、下塗り用石膏二回塗りの後、翌日には既調合仕上げ材を塗って終了とするため、安く早くできるからです。確かに、中塗り土塗り工程は土が乾いて硬くなってからでないと次の工程に取り掛かれないため、一週間程度余分に時間が掛かります。しかし、最終仕上げが色土の場合は特に、漆喰塗りの場合でも、この中塗り土層が仕上げ材の水引加減を一定に調整してくれて、斑乾きなどなく綺麗に納められる効果があります。特に、漆喰や大津壁などの磨き壁を行う場合は、中塗り土に木コテを掛けて硬くしっかりとした下地を作る必要があるため、この工程は欠かせません。また、しばらく前から、塗り壁仕上げ材などの調湿・吸臭効果が着目されていますが、中塗り土層には、話題になることが多い室内揮発物質を吸収付着する効果もあります。塗り重ね施工が左官仕事の特徴であり、塗り厚3ミリ以下と塗装仕事という判断もあります。上塗り仕上げ材料の種類は無限にありますが、亀裂や剥離などの故障がなく、綺麗で味のある変化をしていく塗り壁を求めるのであれば、先人の残した塗り構成の技術はしっかりと継承していく必要があると考えます。
 
 



石膏下擦りのち中塗り土を塗ります



中塗り土塗り後ホウキで引いて乾かします



仕上げ材に混ぜる砂の粒子を篩ってそろえます



フネで中塗り土と仕上げ材をつくります



仕上げ塗り前に中塗り土を塗ります



仕上げ用色土を塗り鏝で撫でて納めます




仕上げ塗り終了後の未乾燥の状態