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 2007/10/15~ 外壁漆喰塗り工事
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





荒壁塗りの材料に砂を混ぜて使います


 家の外壁に求められる条件をまとめてみると、①地震や台風などの外力に抵抗する耐力壁としての要素、②雨・風、火などの進入を防ぐ防雨・防火壁としての要素、③自然の風景や庭と建物が作り出す景観形成要素などがあります。木と土と紙と草などの自然素材を用いた伝統的なつくりの住宅は落ち着いた町並み形成に貢献し、街道沿いの商家の店蔵で発達した塗り籠漆喰塗り壁は延焼を防ぐ防火性能を発揮してきました。一方で、土壁を地震に強いように作ろうという発想はなかったため、粘り気の少ない粘土を用いて薄く塗られた壁や裏返し塗りのない壁は、毎度の地震で大きな被害を受けたはずです。屋根と共に安全で快適なシェルターとしての機能を果たすために、最近は耐震性能が特に強調されています。今後、土塗り壁を耐震要素として用いる場合は、竹小舞の丈夫さ、土の粘性、藁スサの量や水合せの期間、塗り厚など、施工の各項目と各工程に注意を払う必要があります。
 
 当事務所では、耐震要素としては、大断面の軸組部材に通し貫構造と竹小舞土塗り壁のバランスを考えた配置により、粘りのある構造体の実現を目指しています。乾いた荒壁は釘が効くほど硬く閉まり、内外真壁構造の場合、荒壁・中塗り・仕上げ塗りを施した壁厚は、約80ミリにもなります。防火性能の点では、土塗り漆喰塗りの真壁はもちろん耐火壁ですが、土壁の上に無垢の木の羽目板を張る工法も防火性能が認められるようになりました。準防火地域内の新築住宅でも、土壁+羽目板張りの施工が続いています。無垢の木で作られる柱や羽目板と漆喰塗りの外壁は、この国の外壁の標準仕様として親しまれてきたものですが、今後も地域の自然と一体となった景観づくりのための重要な表現方法として活き続けるはずです。
 
  外壁の仕上げ材としての漆喰は、消石灰に角叉や布海苔などの海草を煮て取り出した海苔と麻スサ(短く切った麻の繊維)を混ぜ、フネの中で練り合わせて作られてきました。壁に塗られた消石灰は空気中の二酸化炭素と反応してやがて元の石灰岩の組成に戻っていきます。水に強い特性を生かして多くの建物に塗られてきた漆喰ですが、海苔の粘性やその日の天候に応じて材料の加減を調整して使う必要がありました。現在では、この手間を省いて工場であらかじめ材料を調合して袋詰めした製品を、水を加えて練るだけの既調合漆喰がほとんどの現場で使われています。ただ、製品によっては、外部に使うには海苔もスサも少ないために雨係りの壁には不適当なものも販売されています。漆喰には現場練り漆喰と既調合袋詰漆喰とは別に、かつては高知県内でのみ生産され使用されてきた土佐漆喰という左官材料があります。台風が毎年通過する土佐地方で生まれた土佐漆喰は、水に溶ける糊を加えないこと、5~7ミリ厚の厚塗りで仕上げることなどの特徴を持っていますが、得に水に強い材料です。現在では、練ってビニール袋詰めにされた土佐漆喰が全国に配送されて使われるようになっていますが、当事務所では外壁に塗る漆喰は20年前から一環して土佐漆喰のみを使用してきました。少し黄味かがった柔らかな色合いも、土佐漆喰の特徴の一つです。塗った直後の水を含んだ壁は薄茶色をしていますが、穏やかな鳥の子色に変化し、数年間日にさらされるとだいぶ白くなっていきます。
 
 さて、現場では土塗り壁に漆喰を塗って仕上げるために、乾燥して硬くしまった荒壁の表面の凹凸を均す斑直し塗り工程、上塗りのための平滑な下地を作る中塗り土塗り工程、中塗りと漆喰塗りの付着をよくする砂漆喰塗り工程、最後に仕上げの土佐漆喰塗りという塗り工程を重ねていきます。塗り壁には粘土、砂、藁や麻で作られたスサ、石灰や漆喰などの素材を水で練り合わせて使いますが、どんなに大きな壁も土や砂やスサなの粒子や繊維の結合体であり、外部から大きな力が加われば粒子どうしの結合が切られて壁は崩れます。数ミリの厚さの材料を塗り重ねられる各塗り層は、一つ上の塗り層が物理的にしっかり食い込んで離れにくくするために、箒を引いて表面を荒らしておきます。また塗り層と下地の層が一体となって硬化するように、水引加減を注意深く判断して塗り重ねていきます。どの工程も経験による慎重な判断が求められる作業です。
 
  無垢の木と漆喰の組み合わせの外壁は、景観的には馴染みやすいものとなりますが、真壁の家づくりを行う場合、雨水の侵入を防ぐ配慮が欠かせません。漆喰も土も収縮しながら硬化していく素材のため、一層の塗り厚が大きくなれば比例して柱や梁材との接点の際部分の隙間も大きくなります。この壁際からの漏水を防ぐには、壁際に砂漆喰を三角形断面にしてボーダー状に塗るチリ廻りという工程を行うと効果があります。たとえば、壁面に塗る土佐漆喰の仕上げ塗り厚賀5ミリだとしても、チリ廻り塗り工程を施した柱際の塗り厚は2ミリ程度となりほとんど収縮によるチリ隙を押えることができます。当事務所では、柱を現しにする真壁の柱や張り際にチリ廻り塗りを行わない場合、下地への接着力が優れている変成シリコンを用いて柱や梁際にコーキングすることにしています。ただ、壁際からの漏水を防ぐ手段としてとるべき方法は、まず軒の出を深くする、何段かの霧除けや水切りを設けるなど、設計段階の考慮が大事であることは言うまでもありません。



斑直しホウキ引き後の中塗り作業



この状態でしばらく乾かします



割れ止めメッシュ入りチリ廻り塗り



漆喰に砂を混ぜた砂漆喰塗り作業



砂漆喰塗り後すこし乾かします



上塗り土佐漆喰塗り作業




外壁漆喰塗り完了