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 2007/07/30~ 木工事 造作工事
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





窓に付ける格子受け材を加工する


 竣工後しばらくして携わった家を訪ねると、親戚のお客が長居して夜までなかなか帰らない、幼稚園の友達連れの親子が昼過ぎに来て夕飯まで一緒に食べていく、新聞勧誘の人が囲炉裏端に座り込んで仕事を忘れてくつろいでいく・・・等々、無垢の木や土や紙で作った家は、確かに気持ちがよくていつまでも居たくなるという具体的な話を聞くことがあります。自然素材の家を望んで建てた建て主はもちろんですが、初めて触れる人にとっても五感が反応するのでしょう。手や足で触れる床板や壁の羽目板を張るのは大工仕事ですが、壁を塗る、畳を敷く、建具を吊り込む、壁紙を貼る、タイルを張るなどの仕上げ工事全般に関係してくるのも大工工事です。大工の長が棟梁と呼ばれて職方衆から一目置かれる存在であるのは、家一軒を建てるために関わる職能の技術について、段取りと収まりを一通り精通しているからです。
 
 建て方を終えた建物は、すでにこのリポートでも紹介済みですが、屋根瓦工事・荒壁付け工事・板金工事・サッシ工事の順に進めて、外部からの雨の進入を防いでしまいます。その後の数ヶ月間は、大工衆が中心になって、木工事の仕上げと、建具や左官や壁紙・タイルなどの最終仕上げ職が入れるまでの造作工事を続けます。建て方と屋根までが木工事の前半だとすると、後半の造作・仕上げ工事は多岐に渡ります。敷居鴨居ドア枠などの内法材取り付け・アルミサッシ取り付け・板庇と壁見切り取り付け・外壁羽目板張り・室内床板張り・壁下地取り付け・階段・台所・玄関の順に工事は進み、下駄箱や吊り戸棚などの箱物、座卓やテーブルまで作ることも日常的にあります。
 
 木工事の仕上げ工程は、手を加えようとすると際限なく細かな仕事ができます。同時に、床板・天井板・造作材などの木の種類と程度はともかく幅が広く、銘木の世界は底なし沼に入り込むような木の魔力に支配された奥の深い分野です。お茶会に呼ばれて、文化財を訪ねて、社寺を訪れて日本建築の技と材料を愛でて学ぶことは好きですが、無限の手間を掛け、最上級の材を使って家を作ろうと考えて仕事を続けているわけではありません。当事務所で進める家づくりは、①地震で死なない、②材料で病気にならない、③日と風が通って居心地がよいの順に設計をまとめ、素材生産者と加工職方衆とが仕事を続けられる報酬をいただいて、ぎりぎりのコストで建て主とつくり続けるものです。室内に位置する階段などについては納まりを工夫することがありますが、造作工事の基本はあくまでもすっきりと自然に見せることにあると考えています。
 
 造作材に使用する材料は主にサワラです。心材(赤身)と辺材(白太)の色合いの差が少なく加工しやすい材で、柱材のヒノキやスギともよく馴染みます。室内の床板に張る材料は38ミリ厚のサワラ材を用いることが多いのですが、床暖房を望まれた場合は熱伝導率がよい15ミリ厚のクリの縁甲板を用います。内壁には15ミリ厚のサワラ材を中心に、時々浴室・洗面所の壁・天井には15ミリ厚の青森ヒバを張ることもあります。外壁は、やはり本実加工した15ミリ厚のサワラ材を張ることもありますが、最近は27ミリのスギの貫材をガスパナーで焼いた焼杉板に目板を張って仕上げることが増えてきました。 柱・梁などの構造材が見える設計なので、大工衆は構造材を配る時から木を見る目が要求されますが、造作工事も同様に木表・木裏、元末、節や杢などを確認して作業を続ける繊細さが求められます。構造材のプレカット加工が一般的になり、室内の造作材も現場で長さを揃えるだけですむように加工された部材を使用することが、ごく普通に行われていると聞きます。当事務所の現場では、乾燥された原板を所定の寸法に挽き割り、加工を加えて手鉋で仕上げます。これらの造作部材をそれぞれの場所に取り付ける作業を、どこの建物でも行っています。手間の掛かるやりかたですが、国産材の柱・梁で構成された空間には、国産材の無垢板で作られた造作材を取り付けることで、馴染んだ空間が生まれてきます。見た目の自然さ、居心地の良さというのも、結局は材料の使い方に大きく影響されるものです。スギ・ヒノキ・アカマツ・サワラ・クリなどの国産材を十分に乾燥させて、家一軒の構造材と造作材をまとめるというのが、木の家をつくり続ける本来のあり方なのです。
 
 分離発注工事の場合、材木は建て主が製材所から仕入れて支給することになるので、木工事を担当する大工さんは手間の契約を建て主と交わして工事を始めます。経験的に、構造材を現しにした木造住宅を伝統的な構法で建て上げる場合、躯体工事に最低でも一坪当たり8人口(にんく)は掛かります。さらに、キッチンまわりや下駄箱や収納家具を大工工事で作る場合は、箇所ごとに内容と手間を相談して合計した手間を加えて契約します。その他に、加工場の経費や道具の損料、交通費・通信費などを考えて直接手間の一割を経費として加えます。工事中に追加工事がある場合は、その都度およその追加手間を伝えます。手間の掛かる工事を直接の費用だけで続けるには、住み手と作り手がお互いにフェアな精神を持ち続けることが何より大切なことだと思います。



外壁の板庇を取り付ける



外壁羽目板に目板を打つ



部屋境に取り付けられた鴨居



雨戸・網戸・ガラス戸用の外鴨居



電気式床暖房シートを並べていく



仕上げ材のクリ床板を張り上げる




デッキの工事も進み最終段階に入る