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 2007/07/05  外壁竹小舞掻き
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





柱に開けた穴に横の間渡しを入れていく


 安全性が確認されている素材を使いたいといった願いや、ごみを出さずに将来も再利用が可能な素材を使いたいという考え、身の回りの地域の素材を使ってほしいという理由などから、壁を竹小舞下地土壁塗りで作りたいという建て主が増えています。

 名古屋より西では、えつり師と呼ばれる竹小舞掻き専門職人が活躍している地方もありますが、関東地方では専門職が現在はいないため、左官職自らが竹を掻いて荒壁の下地を作ることになります。

 竹小舞の主な材料は、間渡しに使う直系10~15mm程度の女竹、小舞に使う真竹を割って節を削いだ割り竹、そして竹を縛る棕櫚縄やパーム縄です。藁縄を用いる地方もありますが、竹を掻いていて棕櫚縄の方がよく締まるようです。ビニール縄は水を吸い込むことがないために土との付着性能が小さく、経年により土壁がはがれる原因にもなるので使いません。今回の左官工事を担当する、加藤左官工業では、竹を大分県の専門業者から毎年大量に仕入れて、各現場で使用しています。割り竹は、幅約30mm、厚み3~4mmの大変丈夫なものです。

  小舞掻きの始めに、柱と梁など木部から60mm程度離して直径12mm程度の穴を、間渡し竹の両端の位置に開け、縦横の間渡し竹を差していきます。縦の間渡し竹が横の貫材に当たる箇所は釘で留めます。次に、横の割り竹を間渡し竹の間に指が入る程度の感覚に配り、縄で掻いていきます。続いて縦の割り竹を同様に納めます。施工の順序については、地方差も職人個人の方法の違いもあり、ゆすっても壊れない丈夫な下地ができれば、やり方は他にもいろいろあるはずです。

  電気工事と竹小舞の仕事は、一時平行して進んでいきます。間渡し竹を後で切断しないように、電気のボックスを先に付け、換気扇の枠を付けたり穴などの位置にスリーブを開けておくなどの作業です。内壁も外壁も真壁仕上げの場合、電気配線は土壁の中を通すことになるので、あらかじめ竹小舞の縦横の竹に沿わせケーブルを配線しておきます。電気工事と左官職は、互いのことを配慮しながら工事を進めることが大事です。竹小舞下地土壁塗り工事を10数年続けてきたことで、土壁という伝統工法と電気工事の調整法がつかめてきました。

  竹小舞の完成した時期の現場は、しばらくこのままの状態で置いておきたいほど魅力的な内部空間となります。特に竹小舞を通過して入る光と格子状の影の美しさ、さらに吹き抜ける風の心地よさ。南洋の島なら、これで十分快適な家の完成です。

  ※ 土塗り壁は、竹や藁や粘土など地場の自然素材を利用することで成り立つ伝統的な工法です。伝承的な工法を科学的に解析するために、強度を確認する目的の実大実験が繰り返され、結果として土塗り壁工法が再評価されてきたことは、関係者の努力によるものです。平成16年の国土交通省の告示では、小舞竹の芯々間隔を45mm以下としています。しかし、使用する竹の幅が広い場合、この間隔では指が入らないので著しく施工性が悪いばかりでなく、小舞の間に粘土が食い込みにくくなることで、結果として丈夫な土壁にならないこともあります。あまりにも細かい数値の規定は、もともとばらつきのある自然素材利用の工法には馴染まないという側面もあります。事実、役所の中間検査で小舞竹の間隔をノギスで測られ、土壁を続けることに嫌気が差しているというある地方左官の話しも聞きます。今後の課題として、告示内容に幅を持たせるような改善が必要だと考えています。



間渡しの間に割り竹を配り縄で掻いていく



2階外壁は漆喰塗り真壁なので、貫の外に小舞を掻く



室内側から見た2階竹小舞の状態



1階外壁は羽目板張りのため、貫の内側に小舞を掻く



室内側から見た1階竹小舞の状態