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 2007/07/04  瓦葺き工事
■ 現場リポート

東京都三鷹市で、Tさんの住いの建築工事が始まりました。
このコーナーでは、当事務所の仕事の進め方を知っていただくために、工事の工程を進行順に説明していきたいと思います。なお、竣工は2007年10月を予定しています。





防水紙・瓦桟・サンベルト(縦桟)に載せた平瓦


 大工さんの野地板張りが終了したら、次は瓦屋さんの出番です。雨の多い国なので、柱や梁などの材木を濡らさないために建て方から屋根工事までは途切れなく進めていきます。
 
 当事務所では、片流れアール屋根などの特殊な形の屋根、水勾配が3.5/10以下となる屋根、または部分的な下屋の屋根や庇などを板金で仕上げる場合以外は、瓦葺とすることを標準としています。関東地方の仕事の場合、使用する瓦は埼玉県児玉町でつくられているいぶし銀の地瓦です。

  あまたの屋根材料の中で、瓦を使うのには理由があります。手入れを続けていれば瓦は何年でももつこと。酸にもアルカリにも反応しない耐久性の高い材料であること。瓦と野地板との間には隙間があり、熱を室内に伝えにくいこと。厚みのある材料なので屋根面に当たる雨の音を室内に伝えないこと。建物の移築とともに再利用が可能なこと。最後は土に返る素材であること。そして、土から作られた材料ゆえに、漆喰壁や羽目板などとの馴染みがよく、周囲の自然環境に調和した美しいと思える景観を作りだすことなどです。

 一方、大きな地震が起きるたびに、土葺き工法の屋根瓦が崩れて、重い瓦が建物倒壊の元凶のような扱われ方の報道にふれることがあります。確かに、重い屋根は支える軸組みの負担となり、構造上のバランスが悪かったり、接合部が緩んでいたりすると不利になります。しかし、これは瓦の問題ではなくて、構造計画と木工事の施工精度の問題です。建物を破壊に至らしめない耐震要素を事前に十分検討して、工事を計画通りに進めていけば瓦葺き屋根を心配する必要はありません。

  瓦葺き工法そのものも進化しています。瓦桟に引っ掛けて平瓦を葺いていきますが、地震時の飛散防止として瓦の4枚に一枚は釘打ち止めします。酸性雨が日常的となっている今日、棟瓦を止めるのに用いていた銅線を腐食しにくいステンレス線に変えて締めます。水が廻りやすい部分に詰めるナンバンと呼ぶ粘土に、シリコンを混ぜ合わせることで漏水を防いでいます。いつも使用している児玉町の瓦工場では、凍害をおこす原因となる瓦の吸水率の高さを抑えるために、釉薬をかけないいぶし銀瓦の製品の最終工程で、表面にシリコンを浸透させる工夫をして出荷しています。

 瓦の下地には15mm厚のスギの野地板を用います。屋根は室内側の化粧野地板(30~40mm厚)と、瓦を載せる15mmの捨て野地板との間に45mm程度の空気層を設ける二重構造にしてあります。切妻屋根最上部の熨斗瓦下に、空気抜けの部品を取り付けることで、二重構造の屋根板の隙間の熱を逃がすことができます。簡単な仕組みの部品ですが、確かに熱気が噴出しているのを体感できます。

 瓦屋根は一般的に瓦の下に水が廻っても、下葺きと呼ぶ防水紙の上を水が流れて軒先に出でしまう構造になっています。防水性能が高いこと、材自体に伸縮性があるので瓦桟に打つ釘がシートに開ける穴を塞ぐなどの特徴があるゴムアス系シートをよく使います。一方、とことん自然素材にこだわることを要求される場合、通気性のある17kgのアスファルトフェルトを敷いた上に、コロシートと呼ぶ5枚重ねのスギ薄板(約3mm厚)を瓦の下葺き材として用いることもあります。サワラの板を割って作ったヘギ板のトントンやスギ皮が、長い間瓦屋根の下葺きとして用いられてきて、雨の多いこの国で十分役割を果たしてきました。コロシート下葺き工法は、ゴムアス系シートに比べれば少し割高ですが、屋根を構成する材料に通気性があることが屋根全体を長持ちさせてきた事実を考えると、お勧めしたい工法の一つです。

 瓦は、耐久性を考えれば、最も経済的な屋根葺き工法です。ただ、5年に一度程度は施工した瓦屋さんに頼んで、瓦のずれや結束線の状態を点検してもらうと万全です。「瓦千年手入れ毎年」という言葉があります。家を長持ちさせるには建てた後の管理が大事だという、先人の教えの一つです。



切妻屋根の棟部分に屋根通気用部品を取り付ける



破風板上部のケラバ瓦を葺き土で安定させながら葺く



トツプライトまわりの水切り板金と瓦との取り合い作業



南蛮漆喰を用いて面戸部分を丁寧に仕上げていくく



完成した片側入母屋の切り妻瓦屋根