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 伝統的構法と工法とについて
 これまでの20年間続けてきた木造の家は、基本的には自然の素材の特性に合わせた技法でつくられています。当事務所の住宅の仕様は、栗・杉・檜・赤松などの材を用いて柱や梁を差し口で組み、貫を通して楔や木栓で締めた木組みに、竹小舞下地を掻いて泥壁を付け、二重の野地板の上に杉のトントンで下葺きしてからいぶし銀の日本瓦を葺くということが普通です。つまり、これまで日本中で行われてきた普通の家の造りかたです。木の乾燥、荒壁土の水合わせ期間、材の太さやバランスや接合部の方法、塗り壁の工程と作業時期、瓦割りなどには注意して家造りを進めますが、瓦が載り荒壁が付いた時点で、さっぱりとして気持ちのいい家の完成が半分以上約束されることになります。住み手と共に下地から仕上げまでの各工程を愛でながら、建具や壁や畳などの仕上げを決めていきます。そのゆっくり進む時間も、伝統的な建築技法の良さのひとだろうと考えています。



柱と梁の接合部は極力金物に頼らず木と木を組んで納めます

 木造住宅の施工方法は、集成材や木質パネルを材料として用いてプレカット工場加工、工業製品部材の組み立てを中心とする乾式工法が普通となっています。この時代に、ムクの木材に合わせた仕口・継ぎ手の接合方法や竹小舞土壁など、職人による手加工と組み立て施工を続けるのは理由があります。三代・100年という単位で住宅の寿命を考えた時、変わらない気候風土に馴染んだ施工方法として長い時間の実績があるからです。木や土や紙などの自然素材を用いて建築を進めるとき、その材料の特質を生かして使うにはどんな技法が適しているかを、先人たちは長い経験を通じて見つけてきました。長い間の住み継ぎを条件とすると、建ててからの維持管理、また改築や移築という状況での対応など、時々の場面に対応する知識と経験と技が必要となります。地域と問わず、職人の手わざが広く伝えられることで、今後も普遍的な技術として誰でもその恩恵にあずかることができ、結果として建ててからのつながると考えているからです。



柱には七寸角の材を用いて貫を通し、楔を入れて固めます

 さて、伝統的な木造技法を指す場合、構法と工法の言葉の使い分けがされますが、伝統構法という時は、木を使った骨組みや架構方法に重きをおいた基礎を含む構造体全体を指して使われます。一方、伝統工法という時は構造体に取り付く屋根・壁・建具・仕上げに使われる素材を納める技術を指して使われるのが一般的です。地震や台風などの外力や建物自体の重さに対して壊れ難い構造体をつくる技法を構法といい、雨や雪や暑さ・寒さをしのぎ、架構を長持ちさせるための技法を工法として、構法と工方を分けて考えると理解し易いと思います。もちろん、長寿命の家づくりのためには、両方の知恵がうまく活かされることが大事であることは言うまでもありません。



屋根を支える垂木には柱にもなる四寸角材を三尺間隔で配置します

 伝統技法の特質は、構造的強度、調湿機能、温熱環境特性、耐火性能などについて、どれも完全に解明されている訳ではないのですが、最近の研究成果には注目するものがあります。