折々の風景




   ~カッコウとシャラノキ~

 6月に入り、今年もカッコウの鳴き声を聞きました。事務所で仕事を一休みしながら空を見上げていると、ハトより少し大きい青灰色の鳥が飛んでいったり、すぐ前の電線に留まり尾を上げながら鳴いているのを、運がよければ確認できたりします。早春のシジュウカラ、春のウグイスと共に、カッコウは、夏の訪れを知らせてくれる季節の使者です。姿は見えなくても、耳に心地よいさえずりや鳴き声だけで十分に存在感がありますが、一応日本野鳥の会の会員でもあるので、こんな時だけは双眼鏡を覗いて、よしよしと安心します。

  
 カッコウは夏に托卵のためだけに訪れる渡り鳥です。子供のころはこの鳥の鳴き声を梅雨時に聞いた覚えはないので、もともと高原の鳥が平地にも渡ってくるようになったのは、15~20年くらい前からのことではないかと思います。

 平地の鳥のオナガが高原に勢力を拡大し始めた時期に、高原の鳥のカッコウも平地に渡ってきて、まだ天敵本能がないオナガの巣に托卵していくのだそうです。

 迷惑なのはオナガの方で、個体数が激減した地域もあるとか。いずれ、この情報はオナガに遺伝され、カッコウの姿を見ただけで攻撃を始めるようになるそうですが、現在はその過渡期にあるのだそうです。

 鳴き声を聞いているだけではわかりませんが、鳥の世界の生存競争もこれで結構熾烈です。
 
 カッコウが鳴き始めると咲き出す花の一つに、シャラノキがあります。ナツツバキと呼ばれるように、白い花びらの中に黄色い雄しべと雌しべがある花の形はツバキそのもので、やはり一日で落花します。自然樹形と木肌が美しく、新緑・花・紅葉と一年を通じて楽しめます。あまりスペースもとらず、一度植えれば手入れが要らないので、雑木ブームの昨今、造園木としても好んで植えられる木の一つです。

 
 
当事務所でも、事務所完成直後に株立ちのシャラの木を建物の周囲に数株植え、また依頼主の家の庭木としても数年前までは積極的に薦めてきました。ただ、この木は水気のない場所では枯れやすいのです。根っこを広く深く張ることがないため、地表が乾く場所や西日が強く当たる庭では、水分不足のために枝先から枯れてしまいます。事務所のシャラの木も20年の間にほとんどが枯れてしまい、一部に残った枝と、落ちた種から生えた実生の苗が残る状態です。
 植木としての人気は相変わらず強いらしいのですが、最近は造園業の専門家もこの木の特性に気がついてきて、植える場合は根を深植えしたり、根元にグランドカバーの植栽を施したり、比較的乾燥な強いヤマボウシなどと混ぜて植えるなどの対策を施すようにしていると聞きます。
 

 ツバキ科のこの木の仲間にヒメシャラがあります。先日雨の中、依頼主と箱根に現地調査に行きましたが、黒系や灰色の幹が多い林間にあって、ヒメシャラの黄色味をおびた赤褐色の木肌は一層美しく見えました。この木が生えているだけで、山全体が明るい雰囲気になり、土地の魅力が増して見えるから不思議です。

 数年前に屋久島でも、直径30センチ、高さ20メートルに達するほどの巨木を何本も見ましたが、樹海の中でこの木は独特の景観を作り出していました。雨に打たれて綺麗なのは、アジサイぐらいだろうとこれまでは思っていましたが、ヒメシャラを見るなら雨の日が断然お勧めです。


 限られたスペースの中で四季の移ろいを感じたいという気持ちの現れとして、あまり手を加えすぎない雑木の庭づくりの魅力が広がりつつあります。

 苗木が育てられるものもありますが、山から持ってきて植える場合もあるはずです。シャラノキやヒメシュラのように、植栽後も絶えず水をくれる必要があったり、成長を抑えて自然樹形を保つのには時々は植木屋さんに管理してもらう方がよい木もあります。

 雑木の庭との付き合い方について、試行錯誤と知恵の交換が求められてきた時代になってきました。